人々の信仰や生きることに焦点を当てた異色のダークファンタジー
不死身の青年アグニが「燃えながら生き続ける」という地獄を背負い、復讐の旅を続ける。暴力と狂気と哲学が描かれた作品である。
物語の舞台は、「氷の魔女」により世界が永遠の冬に閉ざされた後の荒廃した地球である。この世界には「祝福者」と呼ばれる特殊能力を持つ人間が存在し、常人では抗しきれない力を持つ者もいる。人々は飢餓に苦しみ、倫理や文明は崩壊しかけており、祝福者を利用した国家が支配を拡大している。救いなき世界において、登場人物たちは皆、自らの欲望・信念・狂気に従って生きている。
主人公アグニは「不死身の祝福者」であり、妹ルナとともに人肉を分け合いながら極寒の村で生きていた。ある日、帝国の祝福者ドマが「浄化」の名のもとに村を焼き尽くし、妹も殺される。ドマの能力は「消えない炎」であり、アグニの体はその炎に包まれながらも死ぬことができず、燃え続けるまま再生するという地獄を味わう。8年後、全身を炎に包まれた火の男となったアグニは、妹の仇を討つため復讐の旅に出る。だがその道程は、敵と味方の区別すら曖昧な狂気に満ち、やがて世界の破壊と再生という壮大な運命へと繋がっていく。
アグニはその風貌と力強さから人々に「神」として崇められるが、本人はただの復讐者にすぎない。信仰とは時に真実を歪め、偶像を作り上げる行為であり、それが悲劇を拡大させるという構図が繰り返される。また、アグニ自身は妹が死ぬ間際に残した「生きて」という言葉が呪いにも希望にもなっており、燃えながら死ねない彼は、なぜ生きるのかを問う。生に意味があるのか、それとも意味など必要ないのか、また、ドマを殺していいのか、など自問自答を続ける。
『ファイアパンチ』は哲学的なダークファンタジーを土台に、アグニの葛藤やそれを生み出す要因となる個性的なキャラクターが魅力的な作品である。
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