愛は奇跡を呼ぶ
映画『いま、会いにゆきます』は、市川拓司の同名小説を原作とし、映像化されたラブストーリーである。現実と幻想のあわいで繰り広げられるこの物語は、純粋な愛の力、そして家族の絆を静かに静かに描いた涙を誘う作品である。
物語の舞台は、緑豊かな郊外の町。1年前に妻・澪を病で亡くした巧は、6歳の息子・佑司と2人で日々を過ごしていた。澪は生前、「1年後の雨の季節に戻ってくる」と言い残していた。そして梅雨が訪れたある日、2人の前に、本当に澪が姿を現す。しかし彼女は過去の記憶をすべて失っていた。澪は家族とともに新たな日々を過ごしながら、やがて自身の過去と、なぜ戻ってきたのかという理由に向き合っていく。
本作の最大の魅力は、愛というテーマをファンタジーの装いの中に包み込みながらも、非常に現実的な感情の機微を丁寧に描き出している点にある。家族を愛すること、自分が誰かの支えであるということ、愛する人と過ごす日常の尊さ、そして誰かを愛するという覚悟、それらが一つひとつ、繊細な演出によって紡がれていく。愛することの本質を描いた作品と言えるだろう。
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