『MASTERキートン』感想・考察・レビュー【漫画】

冒険・考古学・人間ドラマが絶妙に織り交ぜられた知的エンターテインメント

『MASTERキートン』は考古学者でありながら元SAS(イギリス陸軍特殊空挺部隊)軍人という異色の経歴を持つ主人公・キートンが、世界各地の事件や人間模様に関わるオムニバス形式の物語である。舞台はヨーロッパを中心に世界各地に広がり、考古学的な謎や歴史的背景、国際問題、家族の確執、戦争の記憶など、多様なテーマを扱っている。

主人公キートンは、武力に頼らず知恵と観察力で問題を解決することが多い。考古学や歴史、軍事、心理学、宗教など多岐にわたる知識が物語の中に自然に織り込まれており、知的好奇心を刺激する構成となっている。また、元軍人としての経験を持つキートンの視点を通じて、戦争の記憶や人間の業が繰り返し描かれる。だがそこには常に「命をどう守るか」「人を救うにはどうすべきか」という倫理的問いかけが伴う。

『MASTERキートン』は、派手なアクションや感情の爆発よりも、静かに語られる言葉と余白によって人間の複雑さや優しさを描いている。考古学と戦争、人間ドラマと知的冒険が交差する本作は、大人の読者にこそ刺さる深さを持つ作品である。


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