心地よい世界観の漫画
本作は「蟲」と呼ばれる、人間や動物、自然界にさまざまな影響を及ぼす不可思議な存在を題材としている。蟲は精霊や妖怪にも似ているが、より根源的かつ中立的な存在として描かれており、善悪の判断を超えて自然界に偏在する。主人公のギンコは「蟲師」と呼ばれる専門家であり、蟲によって引き起こされる現象や災厄に向き合い、人々と蟲の間に折り合いをつける役割を担う。
物語は基本的に一話完結形式で進行し、自然と人間との関わりや、人の欲望・悲しみ・業が蟲を媒介にして浮かび上がる。叙情的な雰囲気と静謐な世界観が特徴であり、ホラー的要素と幻想的美しさを兼ね備えている点が高く評価されている。また、哲学的な問いを含みながらも決して説教的ではなく、淡々とした語り口で深い余韻を残す。
蟲師はその独自の世界観と文学的な表現から国内外で高い評価を受けているらしい。自然と人間の境界に潜む不可視の存在を描き出すことで、読者に哲学的な問いを問いかける作品である。